森繁作品を観る2009/11/23 19:53

そろそろ今年を振り返る時期になりましたが、今月10日の森繁久彌氏の訃報は、私にとって今年の芸能界最大のニュースでした。

物心がついた頃からテレビドラマや胃腸薬のCMなどで「モリシゲ」の名前は知っていましたが、すでに芸能界の大御所としてどっしり構えた雰囲気があり、軽妙な喜劇役者としての「森繁」は噂でしか聞いた事がありませんでした。(昔土曜日の午後に民放で放送していた「駅前シリーズ」などの映画の記憶は残念ながらほとんどありません)

そこで、ここ数日は追悼の意味を込めて、昔録画したまま放置状態にしていた比較的初期の映画3作品を観ることにしました。

今回観たのは「警察日記」(1955年・日活)、「夫婦善哉」(1955年・東宝)、「猫と正造と二人のをんな」(1956年・東宝)。

3作品の中で一番印象に残った作品は「夫婦善哉」。なんでこんな男に女が惚れるのか不思議に思うような甲斐性なしの主人公を演じていますが、いよいよ帰るところのなくなった主人公と芸者あがりの女房が法善寺でしみじみと善哉を食べるラストシーンや、流れるように美しい上方訛りが印象的です。

「猫と正造と─」では、飼い猫を溺愛する主人公もさることながら、先妻(山田五十鈴)と後妻(香川京子)に加え、母親(浪花千栄子)の三つ巴のやり取りが生々しい作品です。

主人公のだらしなさは「夫婦善哉」よりも更に漫画チックにパワーアップされています。

「警察日記」は、「森繁」演じる巡査の勤務する会津地方の警察署で繰り広げられる、さまざまな日常の様子を描いた人情喜劇。

残念ながらエピソードが多すぎるのと、子役の名演技に気を取られて「森繁」の印象がやや薄くなっています。

その代わり出演者が豪華で、若き日の三国連太郎や杉村春子・沢村貞子などのベテラン俳優の他に、新人の宍戸錠(息子にソックリ)が出演しています。

人身売買や万引き・無銭飲食など、戦後10年経ってもまだまだ貧しかった頃の日本の様子が描かれていて、これはこれで貴重な記録と言えます。

後年の作品になりますが、「恍惚の人」(1973年・東宝)を数年前にたまたま観ましたが、40年近く前に、すでに現代にも通じる老人介護の問題を取り上げており、「森繁」氏は痴呆老人の役を演じていて、熱演のあまり観るのが辛くなったりもしますが、機会があればぜひ一度ご覧ください。

96歳であの世へ召されて、今頃は盟友の三木のり平氏や山茶花究氏らと楽しくやっているのでは?と思います。今更ながらですが、故人のご冥福をお祈りいたします。

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